大連雑学事典

2008年3月までは、大連在住の総経理が現地レポート、その後は日本からの回顧録や中国語トピックス。 過去の記事は右下太字の「大連雑学事典ハンドブック」を参照してください。

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特許不要論3(目的)

物真似製品が当たり前の国に住んでいると、特許制度の功罪について考えてしまう。

1、問題提起
2、スポーツに特許を持ち込んだら
3、特許制度の目的
4、時代錯誤
5、実業と虚業

特許なんか要らないって言う前に、まず特許制度が存在する意味を明らかにしてみよう。
特許制度の目的ってなんだろうか?

秦の始皇帝の時代に作られた兵馬俑からは、馬や兵の土偶の他に、当時としては考えられないような進んだ科学技術に裏付けされた数々の金属製品が発掘されている。その代表が銅馬車だ。
dobasha050212.jpg
銅馬車には、ネジと歯車が使われている。この当時既に、ネジの加工や歯車など同じ形状の部品を大量に作る技術(ある種の鋳型?)があったことを示しているし、クロムを用いた錆びない剣も発掘されている。紀元前の時代に使われたクロムが再び工業製品として人類の目に触れるのは20世紀に入ってからのことだ。この素晴らしい技術が2千年もの間眠っていたことになる。

当時の中国では、独自の技術が他に盗まれるのを極端に嫌い、門外不出の伝承の技術として秘密扱いをして来た。不幸にして、病気や事故、あるいは戦争によって、子孫への技術伝承が済まないうちに当人が死んでしまうと、独自の技術はそこで途絶えてしまったのだ。こうして、秦の時代の科学技術の数々は、戦国時代の乱れと共に雲散霧消してしまった。

もしも、この時代に特許制度があったら、どうだろうか?
ネジ切りの方法も、鋳型による鋳造も、あるいはクロムによる金属の処理方法も特許として公開して、20年間だけは、発明者の独占権利とするが、その後は誰が使っても良いはずだった。原理が公開されるので多くの人がその加工法を知り、その後2千年間も技術が埋もれてしまう最悪の事態は避けられたのではなかったか!

これこそが、特許制度が本来目的とするところなのだ。

そもそも特許制度って、何のためにあるか考えたことがあるかい?
日本の特許法の第1条には、
「この法律は、発明の保護および利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」
と書いてある。
つまり、特許制度の究極の目的は「産業の発展に寄与すること」であり、その手段として発明を保護したり、利用を促進したりして、発明を奨励するのだ。その結果として、更に新しい発明がなされ、産業が発達するのが狙いなのだ。

自分の技術を公開する代償として、一定期間(20年間)は、他の人に使わせない権利を与えるのは、目的ではなく単なる便法に過ぎない。

近頃、誤解されているのは、特許制度が、発明者の権利保護だけを目的とした制度だと思われていることだ。

今や特許争いは、個人の財産と言うよりも、組織対組織の戦いになっている。特に先端技術分野においては、いくつかの優良企業が、沢山の研究者を抱え、高価な分析器を備え、同じ目標に向かって研究を進めている。優秀な研究者が、同じ目標で研究を進めれば、必然的に同じような結論を得ることが多い。そこで、相手より僅かに出願が早いからと言って、100%の権利を与え、やや出遅れた方には全く権利を与えないことが、産業の発展に寄与するのだろうか?

製品を見て「真似できるものならやってみろ、品質では負けないぞ」というやり方のほうが、産業の発展につながるような気がするのだが。

古くは、ビデオテープで、ベータとVHSの戦いがあった。このとき、日本ビクターは、VHS陣営に対して特許使用料を取らないという協定を結びSONYを孤立させることに成功した。VHSにもSONYが有する特許いや、それに極めてよく似た技術が使われていたのだが、それも含めて使用料フリーにしたのだ。

ここで、更に考えてみると、特許制度が無かったらどうなっていたのだろうか?
特許権の放棄とは意味が違うが、特許料を取らずオープンにした方が勝利を収めたことから、特許制度が無かったら、もっとスムースにことが運んだかも知れないとは、考えられないか?

商圏とか部品購入ルートとか色々な要素が入り組んでいるので、短絡的に結論付けることは出来ないが、特許制度が、本来の目的であるべき「産業の発展に寄与する」のではなく、お互いを牽制し合い、ネガティブに作用したと言えないか?

今や、次世代DVDの規格において同様な争いが起きようとしている。この件について詳しい技術論は知らないが、特許制度が、「産業の発展に寄与」しているとはとても思えない。

現在の特許制度は、本来の目的を見失って、発明者の権利保護だけに走り、産業の発展どころか、足の引っ張り合いをさせているに過ぎない。

こんな制度は要らない。残すにしても、大幅に見直す必要がある。

コメント

特許制度については

ほとんど無関係な生活をしてきたので、知識もほとんどありませんが、そこでインターネットでちょっとにわか勉強をしてみたところ、本当にいろんな問題があるようですね。
本当にでっつさんがおっしゃるように、特許の本来的な目的から外れて、制度を悪用してそれこそ「排他的に」金もうけをしようという風潮がますます強くなっているようです。その極みに達しているのがアメリカで、インターネット上でこんな文章を見つけました。

「「アメリカの旧特許法とサブマリン特許,潜伏型特許
 アメリカは先発明主義で,特許権が成立するまでは非公開で,特許の成立から17年有効。サブマリン特許とは,取り合えず出願し,次々と修正を行うことで,意図的に特許の成立を遅らせ,その技術が成立したのを見計らって成立,特許権侵害で訴えるというもの。あるいは,特許技術を購入して辛抱強く持ち続け,その技術が市場に浸透したら権利を主張する手法。急に現れた潜水艦が(特許権という)魚雷で攻撃してくる事からの呼称。特許法の改正前に出願されたものには,以前として潜行中のものもある可能性がある。それまで成立後17年間有効とされていた規定が,移行規定により出願日から20年も選べるようになった。
 すでに事実上の標準技術として広まっているライセンスフリーの技術について,特定の企業がいきなり特許所有の表明とライセンス料の要求を開始した例としては,Unisys の GIF 問題が記憶に新しい。」

要するに多少の研究をして、出願だけしておき、自分では何も作らないで、人が似た物を作るのをひたすら待って、ある日突然姿を現し、「やい、それは俺様が先に開発して特許も取ってるんだ。てめぇ、勝手におれの特許を使いやがって、落とし前を付けてもらおうじゃねぇか!」と言って、法外な価格で特許の購入やライセンス料の支払いを要求するわけです。こうなると、もう強請り、たかりの類いと同じですね。こういうのを「特許ビジネス」とか言うのだとすると、語るに落ちた話と言う他はありません。こういう外道が流行るのを法律で保護する「特許制度」なら、確かにそんなものは無い方がマシだということになりますね。
それと近頃のバイオテクノロジー関係の特許の中で、これもアメリカでやられているようですが、ヒトのDNAの組成を分析して、それを特許でタガを嵌めてしまうというものです。でも考えてみれば、ヒトのDNAというのはて自然界に存在するわけで、どこかのヤツが発明したわけではありませんから、いくら研究に手間が掛かるとは言っても、こんなものを特許の対象にして、排他的に権利を主張するというのは全くふざけた話だと思うんですが、どうでしょうか。

  • 2005/11/09(水) 13:58:31 |
  • URL |
  • 遼寧省営口市在住 #-
  • [ 編集]

まったく、仰るとおりです。

>遼寧省営口市在住さん
コメントを付けにくい、このような戯言にまで、しかも専門外の分野にも拘らず、調査までして書き込みしていただきまして、ありがとうございます。本当に頼りになる相棒です。
さて、国際的な特許制度の中で、アメリカの異端児振りが問題になって久しいのですが、彼の国は、自国に対しては大変わがままな体質を持っているようで、一向に改善(国際協調)の傾向が見られません。先発明主義はアメリカだけの変な考え方です。その結果としてサブマリン特許があるわけですが、もう一つアメリカ特許の問題点は、特許自体が秘密だと言う極めて異常な軍事特許と言われるものがあります。この制度は良く分からないのですが、軍事上の秘密に属する特許は、出願成立しても公開しないというのですから、特許制度の基本を履き違えているとしか思えません。
軍事上の機密は特許出願せず秘密のまま保持するなら分かりますが、後から別の人が同じ発明をすると「その考え方は、既に軍事特許になっているから、権利を与えない」と言い出す始末です。
いま、アメリカは特許制度を自国の産業防衛の国策として利用しています。世界各国は、アメリカに踊らされているのです。

  • 2005/11/10(木) 09:41:01 |
  • URL |
  • でっつ #m/aUcm4U
  • [ 編集]

考えれば考えるほど

このアメリカの「覇権主義」には腹が立ちますね。
政治・軍事的にも、気に入らない国に勝手に「テロ容認国家」とかのレッテル張りをやって、ありもしない「大量殺戮兵器」をでっち上げて戦争を仕掛けて、潰してしまうようなことを平然とやるわけですが、経済の分野でも同じような唯我独尊ぶりを発揮しているわけですよね。
この特異な(というか畸形化した)アメリカ式特許制度の問題は、WTO辺りでは問題になっていないのでしょうか? どう考えても公平性、合理性を欠くわけで、アメリカが利益を独占する構造の強要でしかないわけですから、世界中で反対して潰してしまうべきでしょうね。本当は国際特許の出願数の多い日本が率先して反対すべきなんでしょうが、今の日本の政権にそれを求めても無理だろうな、多分。だったら、EUでも、中国でもいいから、意図的にどんどんアメリカの特許破りや、法外なライセンス料の不払いをやって、実質的にアメリカ式の特許制度を崩壊させてしまえばいいんじゃないか、ロシアあたりには「軍事特許」破りをやって欲しいですね。「爆弾テロ」は困りますが、こういう「テロ」(いや、中国式に言えば「人民戦争」です、笑)はどんどんやるべきです! 
ああ、久し振りに元サヨク青年の血が燃える(笑)。

  • 2005/11/10(木) 12:24:54 |
  • URL |
  • 遼寧省営口市在住 #-
  • [ 編集]

企業が研究開発費にお金を投資できなくなる・・・

特許は企業が安心して開発を行うためのものだと思います(→産業が発達する)。莫大な研究開発費は特許によりこそ回収できるのであって、真似によって同じものが売ってよいとなったら、研究開発しないで新しい商品が作れるので真似した企業の商品の方がはるかに安い価格設定が可能です(研究開発費を回収しなくて良いので)。とくに医薬品などは莫大な研究開発費を回収するためには特許は必須です。電化製品でも同じだと思います。特許がなくなれば、企業が研究開発に投資する金額は激減するでしょう(→産業が発達しない)。

  • 2008/01/08(火) 20:24:29 |
  • URL |
  • まこと #-
  • [ 編集]

特許制度の功罪

>まことさん
コメントありがとうございます。
ご説はごもっともですが、特許制度の問題点も明らかになっておりますので、見直す時期が来ているのではないかというのが私の持論です。
ここで議論をしても尽きないと思いますので、この辺は、下の記事も参考にしてください。
http://huaihua.blog5.fc2.com/blog-entry-252.html
http://huaihua.blog5.fc2.com/blog-entry-251.html

  • 2008/01/11(金) 07:19:54 |
  • URL |
  • でっつ #-
  • [ 編集]

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