大連雑学事典

2008年3月までは、大連在住の総経理が現地レポート、その後は日本からの回顧録や中国語トピックス。 過去の記事は右下太字の「大連雑学事典ハンドブック」を参照してください。

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特許不要論5(実業と虚業)

中国に住んで3年半になる。
物真似製品や贋物があふれる国で、一向に守られることの無い特許制度について、存在意義などをいろいろ考えてみた。

中国では、似たような物真似製品がすぐ出でてくるが、一般に品質は良くない。

中国にも、国際標準に則った特許制度はあるし、発明者の権利を侵してはならないことになっているし、特許権侵害で裁判を起こせば、真っ当な裁定をするはずだ。しかし、現実には、特許など関係なく模倣商品が次々と出てきて店頭に並ぶのは何故だろうか?

正直なところ良く分からない。

一つの因子としては、市場経済が成熟していないので、長期安定の民間会社がまだ少ないことが挙げられる。 如何に中国といえども、将来に向けて会社を成長させようとするまともな経営者は基本的に法律違反(違法な特許侵害)は避けようとするはずだ。逆の言い方をすれば、現在の中国では、将来を考えずに、目先で一儲けしようとたくらんでいる連中が多数暗躍していることを意味している。

取締りが情報が入ると、さっさと工場をたたんで、どこかに逃げてしまう。投資した金額以上の利益が出ていれば、事業には何の未練も無い。彼らは、物真似の情報源として特許文献を活用しているに違いない。こんな連中に知恵を与えるだけなら、特許公開を止めてしまった方がマシだと思う。こんなヤツらに、特許情報を提供する必要は無い。

こんなきっかけで、特許制度の歴史やこれまでの成果、現在の問題点などを調べてみた。ここまでの考え方は、以前の記事に書いたとおりだ。

1、問題提起
2、スポーツに特許を持ち込んだら
3、特許制度の目的
4、時代錯誤
5、実業と虚業

中国の違法な業者に特許情報を公開しないで、完全な自由競争にしたらどうかと思ったのがきっかけだったが、いろいろ考えてみると、中国とは関係無しに、現在の特許制度の問題点が浮かび上がってきた。

ベニスから始まった近代特許制度は、20世紀までの科学技術の発展には大いに貢献したのだが、21世紀の急速な進歩に制度が付いて来れず、歪みが生じているのだと思う。

今や、特許制度は本来の目的を見失って、悪徳ビジネスの温床になっている。「産業の発展に寄与する」どころか、むしろ権利者同士が足の引っ張り合いをして、産業の発展を阻害している面さえある。

発明王エジソンは、発明を考案するだけでなく、実際の物作りと製品化にこだわったと言う。実際に物を作って販売活動をすることを事業化と言い、そういう人たちを実業家と呼ぶ。この点では、エジソンは発明家であり、GE(ゼネラル・エレクトリック社)を立ち上げた実業家でもあった。
これに対して、最近の特許ビジネスにおいては、特許出願だけしておいて、製品化には興味が無い。やがて、どこかの会社が製品化した後で、特許訴訟を起こして巨額の和解金を獲得する「悪徳特許ビジネス」が横行しているのだ。こういう連中を虚業家と呼ぼう。
ミノルタがハネウェル社の使ってもいないオートフォーカス技術に1億ドル(110億円)以上もの巨額の和解金を支払った例は良く知られているところだ。この時に、ハネウェル社は、オートフォーカス技術を事業化しておらず、何の被害も受けていないのに100億円を手にしたのだから、これを虚業と言わずして何と言うべきか!
また、住友電工は米国コーニング社との光ファイバ特許訴訟において、詐欺紛いの理屈に敗訴し、和解金33億円を支払った。この辺の事情については、国際特許戦争の罠に詳しく説明されている。

このように、百億円規模の特許訴訟が起こるのは、アメリカばかりだ。その背景には、米国には、特殊な特許問題が内在しているからだ。
・「公開・公告・異議申立制度」が無く特許の質が低い、
・勝手な理屈による「先発明主義」がある日突然権利を主張する、サブマリン特許を生む、
・「素人陪審員制度」による無茶な判決、
・情報を公開することが大前提の特許制度の原則を無視した「軍事特許(秘密特許)」
・軍事特許を、後々産業化に応用するなどして特許制度を国家の産業防衛手段として私物化しており、特許制度を維持するための大義名分さえも無視しようとしている。


このような問題を内在している米国が、国際協調(ハーモニー)から逸脱した制度を堅持しつつ、世界を振り回しているのが現状だ。余談だが、米国での特許出願件数の上位数社は、全て日本企業なのだ。この状態を日本企業が誇らしく思うのではなく、多額の申請費用を使って、アメリカに踊らされるとも思える。

そもそも特許権とは、排他的な権利、すなわち、使わせない(使用を禁止する)権利なのだ。
産業の発展の為には、特許制度止めて、一切の規制を廃止し、自由競争にすれば良いと思う。

しかし、自分が考えた発明を、自分で事業化して、金を稼ぐのは、当然のことだ。この時に、他人に真似をされたら迷惑だ、と言うのは理解できる。
ところが、自分は事業化はしないが、他の誰もやっちゃいけない、と言う権利だけ振りかざした虚業家の理屈が、産業の発展に寄与するとはとても思えない。

もしも「特許法」を廃止して、「発明者保護法」を新設するとしても、排他的な権利は実際に実業化している発明に限り、悪徳な特許ビジネスを狙っている虚業家の権利は、根こそぎ剥奪するような制度にすることが望ましい。

結論として、一時代の役割を終え、もはや腐敗した特許制度を、この際一旦廃止して、真っ当な研究者や事業者が、正当な評価を受け、広く産業の発展に寄与する新しい制度の制定が求められていると思う。

最後に、ここまで5回に渡って述べた「特許廃止論」はあくまでも、工業所有権たる特許を対象にしたものであって、「商標権」や「著作権」は含まないので、誤解の無いように。
加えて言えば、虚業としての「商標」はありえないと思う。いわゆる「ブランド品」については、時間とお金と名誉をかけて、自ら市場を切り開いた結果として「ブランド」の地位を獲得したもので、そこに偽の名前でちゃっかり相乗りするのは、絶対に許すべきではない。(了)

コメント

大いに賛成ですね

この「特許権」の問題って、これまであんまり考えたことも無かったんですが、確かに今や世界経済を左右する大きな問題ですね。
中国の問題について言えば、でっつさんのお書きになっている「資本主義社会が成熟していない」というところは、「市場経済が成熟していない」と書くべきだと思います。中国では現在の自国の経済体制を「社会主義市場経済」と呼んでいるからで、政治体制の「社会主義」と経済体制の「市場経済」を区別する必要があります。まさに市場経済が未成熟であるがゆえに、商慣習や商業モラルが確立しておらず、さまざまな犯罪行為が発生するというのが現在の中国のありようです。
ただ詳しく見てみると、これらの犯罪行為(物真似、偽物)というのは、既に製品化され販売されている有名ブランド商品に対するもので、技術的な特許権の侵害と言うよりは、商標権や意匠登録、あるいは著作権に関するものが多いようです。

ここで思い出しましたが、中国版新幹線の受注問題で、中国国内に歴史問題などで日本に発注することに反対する勢力がいることとは別に、日本側では「技術流出」を懸念する意見があるようです。この「技術流出」というのは、それこそ「特許権」に関わるものだと思いますが、ここで素人的に思うのは、そんなに簡単に「流出」するような技術って、いったい何程のレベルのものなのか、ということです。バカバカしい。そもそも、現在の中国工業の総合レベルで、簡単に真似して作れるものだったら、そんなのは以前にでっつさんがおっしゃっていた「模倣工学」で十分作れるわけで、わざわざ日本やその他の国に発注する必要もないんじゃないか、という気がします。また簡単に物真似できるようなレベルの「特許技術」だったら、そんなものを頼りにしているようでは、早晩追い抜かれてしまうということではないでしょうか。何時から日本のメーカーはそんな情けない泣き言を言うようになったのか。実物を持って行って、「さあ、これを分解でも何でもして、同じものを作ってみろ。お前さんのところの今の技術レベルじゃ、できっこないさ」と威張れるようなものでなければ、自信を持って外国から受注できるようなものではないでしょう。そういう物作りの技術が日本にはたくさんあったはずで、そういう製造技術は何も姑息なアメリカ流の「特許権」なんかに頼らなくても、十分に世界中に売り込めます。また、相手がその技術レベルに達した時には、さらにその先を走っているというものでなければならないはずです。

  • 2005/11/11(金) 10:45:31 |
  • URL |
  • 遼寧省営口市在住 #-
  • [ 編集]

訂正しました

>遼寧省営口市在住さん、
市場経済のご指摘ありがとうございました。自分でも書いていて語感が変だなと思ったのですが、別の言葉が思いつかず、「資本主義」と書いてしまいました。早速訂しました。
新幹線の技術言うと、純粋に物の加工に関わる部分とは別に、時速300kmで走る弾丸列車を、1時間に10本も走らせる、総合管理が最大のポイントだと思います。停車する駅、通過する駅を選び、そのたびに間違いなくポイントを切り替え、事故が無く、遅延も無く。最も難しいのは、故障などでダイヤが乱れ車両配置計画がメチャメチャになってしまったときの修復ではないでしょうか?
走行本数が少なく、停車駅の間隔も長いフランスのTGVや、時速400kmを超えるといっても単純往復の上海リニアモーターカーとは、大きく異なる部分です。
この総合管理は、コンピュータソフトですが、こればかりは、実践しないと分からないと思いますよ。
それにしても、技術流出なんてけちなことを言ってないで、ドンドン広めればいいじゃないか!中国が真似して電車を作ったって、日本が損するわけでもないだろう。

  • 2005/11/11(金) 11:11:46 |
  • URL |
  • でっつ #m/aUcm4U
  • [ 編集]

特許のお話楽しかったです。

私もたいした技術は持ってませんが、早く言葉を覚えて中日の架け橋になるような仕事がしたいですね。

日中の架け橋

>花花牌子さん
良い響きの言葉ですね。
ますます発展する情報社会の中で、隣国との親睦交流無しには、本当の平和はありえません。今のところ、政治関係は複雑ですが、民間から輪を広げていきましょう。

  • 2005/11/15(火) 07:03:08 |
  • URL |
  • でっつ #m/aUcm4U
  • [ 編集]

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