比較のために爪楊枝を一緒に撮影したので、大きさの見当が付くだろう。爪楊枝の先っちょくらいの小さな粒だ。

シシカバブーとは羊肉の串焼きだが、この料理に欠かせない香辛料が「孜然」なのだ。串焼きの上からパラパラパラっと惜しげもなく振り掛けると、炭火の上に落ちた粒粒が焼かれて独特の香りが広がる。
また独特な味があり、羊の焼肉にはメッチャ合うんだ。
香りと味を文章で表現するのは到底無理な話だが、これがなかったら、羊肉の旨味が半減すると言っても良い。
これほど美味しいと思う「孜然」だが、何でもかんでも振掛ければ良いもんじゃない。
典型的なのがイカの姿焼きだ。中国人はイカが好きなようで、道端でイカを焼いている姿は頻繁に見かける光景だ。イカ焼きと言えば、日本人にとっては醤油生姜のさっぱりとした味わいを期待するのだが、「孜然」と唐辛子をたっぷりと振りかけられると、期待した味とは異なってがっかりする。羊肉のように癖が強い肉なら強い香辛料との相性が良いのだが、イカとかサヨリのように癖の無い素材の場合は、その味わいが消されて香辛料そのものを食っているような感じになる。
大連の道端で羊の串焼きを焼いているのは、ウイグル族の人たちが多く、顔を見るとイスラム人だし、巻き舌で
「ウルルルルルル、、らっしゃい、らっしゃい」
という様子はイスラム文化の香りを漂わせているし、「孜然」の香りはイスラム文化の香りだと感じるほどだ。
「孜然」は新疆ウイグル自治区の産物なので「新疆孜然」とも呼ばれ、彼の地の料理には何でもかんでも「孜然」が使われているらしい。
残念ながらどんな木の実(草の実?)なのか分からない。知っている人がいたら教えてください。
中国では色々な独特の香辛料が使われているが、「孜然」を嫌いな人は比較的少ないのではないだろうか。でも、オレの家庭教師の学生(ハルビン出身)は嫌いだと言っていたが。
市場の専門店で量り売りで買うのが普通なのだが、袋入りの製品もスーパーで売っているおり、一袋3元とか5元なのでお土産にいかが?
本題から離れるが「孜」の字は日本語で「シ」と読み「勤める」と言う意味なのだが、一文字単独で使われることは無く「孜孜」と続けて使われる。広辞苑には「孜孜として働く」と言う例文が載っており、「せっせと働く」という意味で、これは中国語でも同じだ。
読者のコメントから抜粋
遼寧省営口市在住さん
「フェンネル」ではなく「クミン」
中国で言う「孜然」は、「フェンネル」ではなく「クミン」です。
同じセリ科の植物で、実の形も似ていますが、香りが違います。
フェンネルはイタリア料理などで主に魚料理に使われますが、クミンは肉料理に使われます。
このクミンですが、「実は日本でもかなり食べられている」と言うと意外に感じるかも知れませんが、これはカレー粉の主原料の一つなんですね。
カレーの「匂い」の正体は主にこれで、「色」の正体はターメリックです。
中国でも元は漢民族の料理(日本で言う中華料理)の調味料としては使われていなかったものですが、特に羊肉、牛肉との相性が良いので、最近では使うことも多くなっているようです。
本場は新疆とか寧夏などのイスラム教徒の多い少数民族地域で、漢民族の料理の代表的な「四大菜系」と言われる伝統料理の中では、ほとんどと言って良いほど使うことはありません。
ただ、大連など遼寧省の都市にも回族がいて、街中には看板に「清真」とか「回民」とかいう字の入った料理屋がありますから、そういう店ではこの「孜然」をたっぷり使った料理が食べられます。
「孜然牛肉」なんていうのがお薦めでしょうか。香菜もたっぷり入っていてスパイシーです。