なにやら汁が滲み出しているし、近くを通ると異臭がする。

スズメが数羽集まって来て、何かを突っついている。
もし日本だったら、間違いなくカラスが押し寄せて来て、
「クワー、クワァー」
とやかましく騒ぎ、残飯をほじくり返していることだろう。
なぜか大連にはカラスがいない。
日本では何回か引越しをしたが、どこに行っても、オレが酒を飲まない日はあっても、カラスが鳴かない日はなかったものだ。
どうして大連にカラスがいないのだろうか?
野良犬がいないのは、みんな食べちゃったからだという説があるが、怪しいものだ。そういえば、野良猫もいない。
カラスがいない環境って、それだけで快適だ。
中国にカラスがいないかといえば、蘇州寒山寺には、こんな有名な詩碑があり、拓本が販売されている。
「楓橋夜泊」 張継
月落鳥啼霜満天 〔月落ち烏啼いて霜天に満つ〕
江楓漁火対愁眠 〔江楓漁火愁眠に対す〕
姑蘇城外寒山寺 〔姑蘇城外の寒山寺〕
夜半鐘声至客船 〔夜半の鐘声客船に到る〕
オレの勝手な訳文
月が沈んで夜も更けて来た
静寂の中から、不吉なカラスの鳴声が聞こえてくる
辺りは、白いもやが空いっぱいに立ち込めて来た
思い悩んで眠れずににいると
岸辺のカエデといさり火が、見るともなく目に入る
遠く蘇州郊外の寒山寺から
夜中を知らせる寂しい鐘の音が、
こんな旅の船にまで聞こえて来る
まぁ、こんなもんだろ。
詩の鑑賞はともかく、
「カラスが鳴く」と書いているのだから、中国にもカラスがいるのだろうな。
どうして大連にいないのか? 不思議だ。