大連雑学事典

2008年3月までは、大連在住の総経理が現地レポート、その後は日本からの回顧録や中国語トピックス。 過去の記事は右下太字の「大連雑学事典ハンドブック」を参照してください。

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中国は訴訟大国(ダメもと訴訟)

「知的財産権」という言葉がある。
知的財産権とは、特許権、実用新案権、著作権、意匠権、商標権など、無形の財産権のことであり、工業所有権と極めて近い概念だが、知的財産のほうが範囲が広いような気がする。
ま、ともかく、今日の話題はこの知的財産をめぐる訴訟の話であるが、日中の気質の差が明確に数字で現れているので実におもしろい。
Q&A形式で進めることにする。

[Q1]知的財産権に関する訴訟件数は日本と中国でどちらが多い?
[A1]中国では、年々「知的財産権」訴訟が増えており、最近では一年間に2万件を超えており、更に増えそうな勢いだ。
日本ではどうかというと、訴訟件数は毎年、年間500件程度で大きな変化はない。
グラフに表してみるとこんな具合で、圧倒的に中国が多い。(グラフの2008年数値は予測)
chizaisoshou.jpg

[Q2]中国は人口が多いのだから訴訟件数が多いは当たり前なのではないか?
[A2]実は人口比にかかわらず、特許出願件数は圧倒的に日本の方が多いのだ。確かに中国の人口は13億人を超えているが、特許などには無関係で暮らしている人間が多いだけのことで、工業的な権利に関心を持っている人は、ひょっとしたら日本の方が多いのかも知れない。
ともかく、数字でみると日本の特許の出願件数は、1年間に40万件以上であるのに対して、中国では年々増えているがまだ日本の半分で20万件程度だ。
tokkyoshutsugan.jpg
ここで、特許出願件数に対する訴訟の比率を計算してみると、日本は特許出願件数800:1訴訟だが、中国では特許出願件数10:1訴訟となり、日本より80倍も訴訟件数比率が高いことが分かる。

[Q3]訴えた方が勝つか負けるか?
[A3]日本ではほとんどの場合訴えた方(原告)が勝つ。あるいは途中で調停でケリがついて和解となり、実質的に原告の主張を通す結果となることがほとんどだ。
しかし、中国では原告が勝ったり負けたり五分五分だ。しかも結審に至るまでの時間が早く、1年程度で判決がでる。

[Q4]なぜ日本は原告の勝率が高く、中国は五分五分なの?
[A4]日本では訴訟を起こした以上、負けたりすると、費用もかかるしみっともないので、提訴する前に十分に調査をして、弁理士や弁護士の意見をよく聞いてから行動を起こす。つまり、負けない条件を整えてからでないと訴訟を起こさないのだ。
また、訴える前に、相手方に警告を発して自粛を求め、相手方も調査して分が悪いと思ったら、裁判になる前に和解に応じることが多いので、お互いに事を荒立てないで解決する姿勢が強い。
それに対して、中国では、ちょっと言い掛かりをつけるネタを見つけると、忠告もせずに、さっさと訴えてしまう例が多い。うまく主張が通れば儲けもの、つまり「ダメもと訴訟」と言うわけだ。普段の中国人の生活行動パターンそのものだ。

[Q5]特許のキズをみつけたら、どうする。
[A5]特許というものは、審査官が文献調査をして前例がないと認定することによって権利が生じるのだが、キズがあることも多い。審査を受けて特許権を獲得したが、よく調べてみたら類似の発明が見つかったようなケースである。審査官とは言え万能の神ではないので先行技術や文献を見逃すこともある、そういう場合にキズが残る。キズがある特許は、無効審判を起こされると特許の範囲を狭くされたり、特許権そのものが消滅してしまうこともあるので、真に確立された権利とは言えない。
特に中国では実用新案の比率が高いことが特徴だ。中国の実用新案は、申請費用が安く無審査で登録されるので、簡単に権利を持つことができるのだが、何しろ無審査なのでキズだらけなのだ。
 (2007年の集計によれば、発明特許24.5万件に対して、実用新案18.1万件、意匠26.8万件だった)
特許訴訟を考えている時に、自らの特許あるいは実用新案のキズに気が付いたら、日本の会社だったら訴訟を起こさないのが普通だ。しかし中国では、弁護士の忠告も聞かずお構いなしに訴訟を起こす。相手がこちらのキズに気がつかなければ良いのだからと。こんな調子だから、件数も増えるし、勝率も悪い。


過去に、いろいろと日本人(自己主張をしない、相手を思いやる、争いを好まない)と中国人(自己主張がめっちゃ強い、ダメもとでまずは言いたいことを言ってみる、いさかいを厭わない、など)の考え方の差を書いたつもりだが、これだけはっきりと数字に現れたのは初めてで、非常に興味深い。

ところで、裁判・訴訟王国と言えば誰しもアメリカを思い浮かべるだろう。
交通事故が発生すると、救急車の後ろを弁護士の車が追いかけて、病院でウンウンうなっている怪我人に対して「訴訟をお考えなら当弁護士にお任せください」とペンを持たせてサインを迫ると言う笑い話があるくらいだ。
上と同じ数字を並べてみると、アメリカの年間特許出願件数は、最近日本を追い越して世界一となり43万件くらいで、特許訴訟件数は1万件ほどなので、比率で言えば、43:1となる。
整理すると、1件の知財訴訟に対する特許出願件数は、丸めて言えば
日本=800件、 アメリカ=40件、 中国=10件 となる。

中国が乱暴なのか、日本が慎重すぎるのか?
せっかく高い金を出して特許出願しているのだから、日本はもっと積極的な活用をすべきなのかもしれない。
うーん、ちょっと考えてしまうデータだなぁ。

コメント

つまりこうですね?

日本~安定志向社会
米国~チャレンジ志向社会
中国~ギャンブル志向社会

と言う事で。

  • 2008/12/22(月) 20:22:42 |
  • URL |
  • kaineko #-
  • [ 編集]

座布団一枚

>kainekoさん
ぴったりの表現ですね。
中国人のギャンブル志向は、商売態度にみられますね。
ろくな事前調査もしないで店を出して、売れなきゃとっとと閉めてしまう。
路上のトランプもそのギャンブル志向の現われでしょうか。

  • 2008/12/23(火) 14:47:21 |
  • URL |
  • でっつ #m/aUcm4U
  • [ 編集]

告訴

でっつさん 今年も面白い話題ありがとう。
ダメもと、という発想はもともと古代中国がオリジンでしょうかねえ。
春秋戦国時代の縦横家たちの発想と弁舌は、何とか自分を売り込もうとして、
あらゆる角度から、ダメもと的な弁論を組み立てて、遊説して回った感があります。
大体 中国語を学び始めたとき、話すという意味に告訴という単語が出てくるのが
一般的な日本人には、抵抗感があるようです。
告訴は辞書に依れば、話すという意味と日本語と同じ被害者が法廷に訴えると
2つの意味が出てます。訴訟におっかなびっくりの日本人と、訴訟とか口げんかは
へいチャラの中国人の差でしょうか。
なお路上で老人たちが遊んでいるトランプは、ほとんどが3組の例の打滾子という
遊びで、頭脳の鍛錬、知恵比べで、お金は賭けなくても面白いので賭博性は低い。
一方、最近市内も開発区も賭けカード専門のサロンが増えてきて、ここでは大金が
賭けられているそうです。
では、良いお年を。

  • 2008/12/25(木) 11:58:37 |
  • URL |
  • サンディ #-
  • [ 編集]

Re:告訴

>サンディさん
おっしゃるとおりです、私も中国語初学者のとき(今でもあまり進歩していませんが)、告訴(ガオス)の文字を見たときには違和感を感じましたね。日本語では、普通に話すとか、伝えると言う意味はありませんから、どうしてもお上に訴えることになりますからね。
今年は、たくさんのコメントをいただきありがとうございました。また来年も現地情報を含めて、メッセージをお寄せください。

  • 2008/12/28(日) 08:15:59 |
  • URL |
  • でっつ #m/aUcm4U
  • [ 編集]

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