大連雑学事典

2008年3月までは、大連在住の総経理が現地レポート、その後は日本からの回顧録や中国語トピックス。 過去の記事は右下太字の「大連雑学事典ハンドブック」を参照してください。

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中国の特許裁判(地域保護特性)

日本の最高裁に相当する最高人民法院は、全国組織であり重要な判例を示して、各地の高級人民法院や中級人民法院に対して、法解釈の基準を示すことはあるが、指揮権や人事権はないし、人事交流もない。
その地域から出たことがない裁判官が育てば、自然にその地域特有の裁判慣例が育っていく。
さらに、裁判所の人事権を持ち実質的に運営主体である各地の人民代表大会(地方議会)が裁判委員会なる組織を有して、裁判所の監視に当たっているものだから、その地方運営に好ましくない判決は出しにくい。
裁判所の判決に行政的な判断が加わることは、地方に限ったことではない。
2009年7月に新疆ウイグル自治区ウルムチで起きた大暴動の発端となった広東省韶関市の玩具工場での乱闘事件で、韶関市の法院(地裁)は10月10日、1人に死刑、1人に無期懲役の判決を言い渡した。かなり厳しい判決だが、少数民族独立問題を国家存立の重要な問題と考える中国政府の判断がこのみせしめ的な判決を引き出したといえる。直切判決を下したのは、韶関市中級人民法院だが、死刑判決だけは事前に最高人民法院の許可を受けなければならないはずなので、最高人民法院の判断を肩代わりしたともいえる。houin.png

次は福建省の事例だが、電力会社の排ガス脱硫装置が特許に抵触しているとして、特許権者が使用差し止め請求を起こしたが、脱硫装置を外すと地域環境に悪影響を及ぼすため、差し止め請求を却下した判決がある。特許権は認めているので、相応の特許使用料を支払うことを条件にしたのだが、裁判所の判決理由として地域環境保全を優先していることの法的根拠は薄いというか、むしろないと言ったほうがよいだろう。純粋な法的解釈を脇にどけて、行政判断そのものだ。
環境のためなら仕方がないと納得してしまうのか。

じゃあ、特許侵害製品を製造している会社に対して、操業停止を請求した場合はどうだろうか。その工場が多人数の労働者を抱えていた場合、操業停止により失業者があふれると、地域の経済状況が悪化し治安も悪くなるから、特許使用を(暗黙に)認めると言うようなことにもなりかねない。
この考え方は、海賊版DVDや各種模倣品に対する中国政府の基本的な方針なのだから、地方政府が同調するのも当然のことだ。 この辺の私見を「海賊版を止められない訳」に書いておいた。

特許裁判になったときに、いくら中国の裁判所でも、治安が悪くなるからこの特許を認めないと言うわけにはいかない。敵はどういう作戦で来るかというと、特許が無効であるという攻撃をしてくるのである。
特許の無効審判は、進歩性と新規性で争われるのが普通だが、そんな本筋論に入る前に、様式が不完全(記載要件違反、記載不備)だとか、漢字の意味が不明瞭だとか、明確性要件違反(厚い、薄い、強い、弱いなど不明瞭な単語)など、それこそ重箱の隅を突っつくような言い分を裁判官が支持する、最初から結論ありきのお芝居だからどうしようもない。

こういう地域保護傾向は、地方に行くほど強くなり、大都市ではだんだん少なくなりつつある。
日系企業が特許(実用新案や意匠を含む)訴訟を起こすなら、相手の土俵から離れたところで勝負をしなければ、負けるのは確実で、訴訟を起こす意味がない。

たとえば相手の会社が、西安にあったとして、西安の中級人民法院に訴えたとしても勝目はないだろう。
北京か上海で勝負をしなければならないのだが、どうしたらいいだろうか?
裁判所にも管轄地域が定められているので、西安の会社を勝手に北京の裁判所に訴えるわけには行かない。

さて、その答えは次回。(続く)

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