FC2ブログ

大連雑学事典

2008年3月までは、大連在住の総経理が現地レポート、その後は日本からの回顧録や中国語トピックス。 過去の記事は右下太字の「大連雑学事典ハンドブック」を参照してください。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

中国特許事情トピックス

中国の知的財産権(特許、実用新案、商標など)については、中国特有の問題点の理解と対策が必要である。
過去の記事をインデックス風にまとめてみた。
大体このくらい知っていれば、トピック的な基礎知識としては十分だろう。
更に細かいことを言えば、明細書の書き方とか、補正の仕方、第三次特許法改訂で何が重要視されているかなど、注意すべき点は山ほどあるが、ネット上には情報があふれているので、かなりのことが分かるはずだ。中国語が読めれば更に良い。実務上、費用がいくらかかるかとか、どこの特許事務所が優秀かというような具体的な項目は自分の責任で調べてくれ。

問題の事例
クレヨンしんちゃんが負けた 
漫画キャラクターであるクレヨンしんちゃんの商標が中国の会社から出願されて登録になった。本家の双葉社の中国進出が難しい。
偽物被害(びっくり電機が中国から撤退)
商標対策をしていないと、こんな風に被害にあい、場合によっては撤退も余儀なくされる、フィクションだが、大きな教訓を示している。
偽商標事例(日本YAMAHA事件)
中国に商標を登録していたおかげで、適切に対応できた事例。中国の偽者会社は、ここまでやるかという印象が残る。
中国の特許裁判(中国では販売しないけど)
具体的な事例紹介ではないが、中国で生産、販売しないから中国出願は関係ないと判断する前に、こういう問題点を理解しておいてよ。

中国の知的財産訴訟件数
中国は訴訟大国(ダメもと訴訟)
特許出願件数に比較して、膨大な訴訟件数の実態をグラフで見ると、この国の国民性が見えてくる。

中国特許裁判の傾向と対策
中国の特許裁判(組織構造)
中国の裁判所は、行政組織の中に組み込まれていることを理解しておかないと、判断を間違うことになる。中国の国の構造は、司法・立法・行政の三権分立ではなく、中国共産党の一党独裁であり、司法も軍隊も立法も行政も、すべての機関は共産党の配下にあるのだ。
中国の特許裁判(地域保護特性)
裁判所が行政組織に組み込まれているので、純粋な法律判断を超えて、その地域に好ましい結論を導き出す判断を示すことがしばしばである。裁判所を選ぶことによって、判決が大きく変化する特性をよく理解しておこう。
中国の特許裁判(被告を大都市に引っ張り出す技)
外国企業(勿論日本を含む)が地方で知的財産権の裁判を提訴すると、地域保護政策(裁判で政策と言うのは奇妙だが)の壁に当たって、著しく不利である場合が多い。地方の偽者製造会社を大都市で提訴する方法とは。
中国の特許裁判(被告を無理やり大都市に引っ張り出す秘策)
上の記事で書いた内容では、解決できない中間製品(部品)の場合どうしたらよいか。それこそ、ここまでやるかと言う感じだが、被害額が億円を超えるようなら、徹底的に戦う姿勢を見せることだ。
中国の特許裁判(安易な警告書は墓穴を掘る)
上の二つに書いたように、大都市の裁判所に引っ張り出す技を台無しにするのが「警告書」だと言われて、ピンと来るかな。
中国の特許裁判(実用新案を侮るな)
実用新案を軽く見ると、その補償金額の大きさに驚くことになる。中国語でしか検索できないのだけれど、信頼できる代理店を通して、きちんと事前調査することが必要だ。
中国の特許裁判(商標を押さえろ)
上に書いた、びっくり電気撤退事件、日本YAMAHA事件を見ると、中国における商標登録が如何に重要であるかが理解できるが、近頃は「商標お化け」が出没しているので、更に警戒が必要だ。

特許庁技術懇話会誌より
特技懇誌から、中国関係の記事を紹介しておく
中国におけるエンフォースメントについて(PDF)
中国における企業の模倣品対策活動(PDF)
中国「国家知的財産権戦略綱要」の理念と第三次特許法改正(PDF)
SIPOの概況と中国専利実務の紹介(PDF)
SIPOの審査実務の紹介(PDF)
日中特許庁協力について(PDF)
日本貿易振興機構(JETRO)北京センターの活動について(PDF)
中国特許制度のエッセンス(PDF)

以上で「中国特許事情」関連記事を終了する。
なお、オレは特許の専門家ではないし、実務的な仕事をしたこともない、ただ中国の実情に興味があって調べたことを書いているだけなので、ここに書いた以上のことを質問されても答えられないので、悪しからず。

中国の特許裁判(安易な警告書は墓穴を掘る)

日本で特許侵害製品を発見した場合の常套手段としては、相手の会社に警告書を送るのが普通だ。
その後、相手の会社が「警告書」の内容を判断して、(1)か(2)(3)の道をたどるのが普通だ。
 (1)素直に特許権侵害を認めて
    ・製造を中止するか
    ・クロスライセンスの協議をするか
    ・特許実施権の金額交渉をする    ⇒ 和解して解決
 (2)特許侵害を否定して
    ・警告を無視する
    ・反論を提示する
 (3)話し合いがまとまらなければ裁判に持ち込む。
警告なしに、いきなり訴訟に持ち込む例は少ない。

中国の特許侵害案件において、日本と同じような感覚で、安易に「警告書」を相手の会社に送りつけると墓穴を掘ることになるので注意が必要だ。

これまでに再三書いているように、中国の地方裁判所は(地方になるほど)地域保護政策に順応した判断をすることが多いので、外国企業の裁判は大都市に引っ張り出してやるように工夫しなければ勝目がない。
ところが、警告書を送りつけると、彼らはどうするかと言うと地元の裁判所に「特許不侵害確認請求訴訟」を起こすのだ。
こうなると、大都市に引っ張り出す作戦はその時点で使えなくなるので負け戦は見え見えだ。
と言うのは、製造場所の人民法院が管轄権を有するが、製造場所が何処であれ販売地の人民法院も管轄権を有し、先に訴訟案件を受理した人民法院が管轄することになっているからだ。
作戦を練るまもなく、相手の土俵に乗せられてしまう。

訴訟大国の中国においては、警告書など何の役にも立たないくらいに割り切るほうが良い。

偽商標事例(日本YAMAHA事件)

偽商標事件の話題として、ちょっと古いんだけど、偽物のオートバイに、堂々とYAMAHAのマークをつけて販売した事件があった。

2000年4月、偽オートバイ偽造グループが石川県の小松市に「レスポ株式会社」を登記した。
同年8月に一度社名を変更して、再度9月に社名を「日本雅馬哈株式会社」に変更した。
中国語で「日本ヤマハ」と読む。
この会社が「日本YAMAHA株式会社」と刻印された印鑑を日本の登記所に届出して受理された。
この事実を元に、「日本雅馬哈株式会社」は、中国のオートバイ会社に、「日本YAMAHA」の商標許諾の契約を締結した。偽オートバイ会社では、日本政府が認定した会社と契約したのだから、問題ないと「日本YAMAHA」なるオートバイを販売し始めたのだ。
nihonyamaha.png

当然、本物の「ヤマハ発動機」は怒った。
代理人を通して、国家工商行政管理局に取締りを要請し、これが認められた。
一方、2001年1月には金沢地裁小松支部に「日本雅馬哈株式会社」の商号抹消の訴訟を起こし、これも認められ、一連の騒ぎは、2001年3月に金型撤去でケリが付いた。

この事件は、「ヤマハ発動機」が、事前に 「YAMAHA」等の商標を中国に登録しておいたから解決出来たもので、何もしていなかったら、対応が非常に難しいところだった。
この吉利グループのリーダーは、農民の男4兄弟だが、事業欲が旺盛で、次々に事業を起こし、1994年からオートバイ事業に参画した。
売るためなら、ここまでやるかというくらい大掛かりである。後に吉利自動車として大成功を収めることになる。

偽物被害(びっくり電機が中国から撤退)

2004年4月号の「大連だより」に書いたフィクションです。
思えば、北上大の初期の作品と言えるかもしれませんから貴重品です。


1997年6月、 びっくり電機株式会社、営業企画会議;
営業部長:「我が社のトコトンジューサーは、野菜や果実の有効栄養素を98%までトコトン搾り出す高性能が認められて、今や国内では知名度ナンバーワンです。」
美栗社長:「そうだな、『TOKTON』ブランドも良く知られておる。」
営業部長:「中国では、健康意識が高まり、富裕層も増えているので、トコトンジューサーの市場はますます広がるものと思います。今こそ、中国へ進出しましょう」
美栗社長:「よし、それじゃ、製販子会社を作って、中国展開を進めよう。 なに!? 特許だ? 商標登録だ? ばぁか! 中国でそんなもんが役に立つと思っとるのか? 費用の無駄だ止めとけ。」
【社長、ホントにそれでいいんですか?】

3年後の2000年4月、 大連美栗電機製造有限公司会議室;
大連総経理:「社長、中国進出は大成功です、販売目標金額を大きく上回って、初年度3億円、2年度は10億円を達成し、本年度は40億円の見込みです。」
美栗社長:「結構、結構。その調子で進めてくれたまえ!」
大連総経理:「一つ懸念材料があります。実は最近TOKTONジューサーの偽物が出回っているのです。これが現物です。」
美栗社長:「偽物が出たのか、我が社も有名になったもんだな、ハァッハァッハァ! で、何だコリャ! ひどい粗悪品だなぁ。こんなものが売れる訳ないぞ。たとえ市場の1%位食われても高々4千万円だ。有名税だと思って呉れてやれ。」
【社長、対策を打つなら今ですよ!!】

その2年後の2002年6月、 美栗電機株式会社、営業企画会議;
美栗社長:「営業部長!今年になって、中国の売上が落ちているが、何があったんだね?」
営業部長:「実は、粗悪な偽物が出回り、『TOKTON』ブランドの信用がガタ落ちなんです。販売目標を大きく下回って、もはや5億円の達成も難しい状況です」
美栗社長:「偽物なんか、止めさせろ! うちが本物なのは明白だろ!」
大連総経理:「いえ、社長。当社では、『TOKTON』ブランドの商標登録をしていないので、摘発できないのです。」
美栗社長:「・・・・・・・!!!」
【社長、だから言ったじゃないですか?】

更に1年後、2003年10月、電話にて;
大連総経理:「社長、大変です。『TOKTONジューサー』で指を切断したという事故で我が社が訴えられました。」
美栗社長:「そんな馬鹿なことがあるか! TOKTONジューサーは、安全性には十分配慮しているはずだ。」
大連総経理:「社長、それが、調べてみたら、実は偽物だったんです。」
美栗社長:「それなら、我が社は関係ないじゃないか!」
大連総経理:「でも、パッケージにも、製品にも、『TOKTONジューサー』、製造発売元、びっくり電機って書いてあるから、言い逃れ出来ません。」
美栗社長:「偽物業者を探し出して、ひっ捕まえて来い!」
大連総経理:「広東省でやっと工場を見つけたのですが、どこかへ逃げてしまって、もうどうにもなりません。」
びっくり電機は、散々な目にあって、2004年3月、終に中国から撤退しました。

これは、もちろん作り話ですが、中国の偽物を放って置くと、こんな風に被害が広がるという典型的なパターンです。戦うための武器として、商標登録は、欠かせません。

中国の特許裁判(商標を押さえろ)

専利ではないが、中国で問題になっている知的財産として商標がある。

商標登録は、自分の権利を護るために出願登録するのが本筋なのだが、中国で登録された商標の中には、守備ではなく、攻撃的な商標がたくさんある。
特許を金儲けの材料にして世間を騒がせている「パテント・トロール」がニュースで取り上げられているが、トロールには及ばないとしても、中国には「商標お化け」みたいなものが暗躍している。

日本の企業名や、商標、地名を中国の商標として登録して、これを日本の関係者に買取を要求するお化けだ。中国の商標事件でもっとも有名なのが、クレヨンしんちゃんが負けた事件であろう。

仮に、笹餅食品の「笹殿餅」という有名な食品があったとしよう。
・中国の企業あるいは個人が「笹殿餅」を商標申請する。
・公告から三ヶ月以内に異議がなければ、「笹殿餅」は商標として登録される。
・一旦登録されて権利になると、取り消し訴訟には4、5年かかり、取り消しに成功してもフリーになるだけで笹殿食品のものになるわけではない。
・とすると、面倒な取り消し訴訟を起こすよりも、中国企業(あるいは個人)から権利を買い取った方が得だ、といいう判断が出てくる。
・こういう事例が紹介されると、オレもオレもと「商標お化け」が生まれてくるのだ。

防御方法は簡単だ。
先に中国商標を登録することだ。

商標でもめたり有名な事例にはこんなものがある
「讃岐烏冬(うどん)」の名称が、中国で商標登録申請された。
「青森」が中国で申請された例では、青森県などが二〇〇三年に異議申し立てをしたが、取り消しには五年近くかかった。
「松浦亜弥」は2004年に香港の会社が「衣料品」ブランドとして申請。07年に登録された。
「酒井法子」は浙江省の化粧品メーカーが中国語読みにして申請していることが判明。湖南省のメーカーも水着や衣料品で利用しようと申請している。
「安室奈美恵」の衣類、下着や子供服、水着などの製品はすでに市場に出回っており、安さが売り物だという。
「福原愛」は薬品
「浜崎歩」は文房具
「藤原紀香」は化粧品の商標としてそれぞれ登録されている。

ホンダが轟達(HONGDA)を潰すのに10年近くかかっている。これは「本田」そのものではないので予防は難しいだろう。

=====
9月15日までに2009年の中国の商標登録申請審査数は100万5千件に達し、2008年同期に比べ2.53倍に増加した。チャイナネットが伝えた。

 これは8カ月半で従来の3年3カ月の商標審査数を達成したことになり、中国の商標史にとって重要な一里塚として認識されている。現在のところ中国の商標登録数や審査数、有効登録商標数はいずれも世界一で、中国は世界一の商標大国である。

中国の特許裁判(中国では販売しないけど)

中国の特許裁判、補償金額の査定などを紹介してきたが、次の場合はどうだろうか。

「当社の製品は中国での販売計画は無く、国内と欧米しか販売しないし、中国での生産予定もないから、中国への特許出願はしない」

これが、大問題になるケースもあることを認識しておこう。
なぜ問題になるかというと、欧米でヒットして大量に売れていることを知ると、中国メーカーが偽者を作り始めるのだ。これを、中国国内で販売している場合は被害が目立たないが、欧米に輸出を始めるから始末が悪い。
偽物の品質が良ければ市場を取られてしまうし、逆に品質が悪ければ製造元の区別がつかない消費者から粗悪品のそしりを受けることになり、市場を荒らされる。

製品を見て判断できる特許なら欧米各国で輸入差し止め訴訟の可能性もあるが、製法特許だったら、製造現場を押さえるしか方法が無いので、中国のメーカーを押さえるしかない。しかし、中国にこの製法特許を出願していないと、止めさせる法的根拠が無い。
製法特許に限らずとも、欧米各国で輸入差し止め訴訟を起こしても、輸入業者がたくさんいればそれこそもぐら叩きゲームの様相を呈するので、大元の中国メーカーを叩くのが効率的である。

世界の偽物生産拠点である中国だけに、こんな点からも、警戒しておく必要がある。

中国の特許裁判(実用新案を侮るな)

中国では知的財産権を、専利権と言い、特許のほかに実用新案と意匠を含む。
中国の特許管理体制は、完全に先進国並みに整備されており、日本の特許庁を上回るほどだ。

中国は、知財権訴訟王国だ。年間2万件を超え、アメリカを追い抜いて世界一の裁判件数になっている。中でも、中国の実用新案を侮ってはいけない。こいつはヤバイ!!
どんな風にヤバイかと言うと
1、出願料が安いので、町の発明家(個人)出願が多く、企業名検索では引っかからない。
2、中国語のみなので、PCT出願のような英語検索が出来ない。
3、出願後無審査で登録され、権利が発生する。
4、無効審判を起こしても、そのものずばりの証拠でないとなかなか崩せない。
5、賠償金に制限がない。

シュナイダー事件(小型ブレーカー):
有名な事件としては、小型の電源ブレーカーを製造しているフランスのシュナイダー社が、正泰集団との訴訟合戦で、50億円の損害賠償を命じられ、最終的に20億円程度で和解した事件。
たかが実用新案と舐めてかかると、手痛いしっぺ返しをくうので、特許と同じように配慮しなければならない。シュナイダー事件に関して中国の裁判所が示した損害額は、この実用新案の貢献度合いなどまったく無視して、該当期間の製品の利益全額だった。それがおよそ50億円だ。通常、実用新案の貢献度は、せいぜい数%なのだが、この辺の被害認定金額査定にも大いに疑問がある。

株式会社ワコム事件(ペンタブレット):
ハンワン社がペンタブレットを中国で製造、中国、米国で販売
   中国特許3件、米国特許6件を侵害しているとワコムが中国と米国で差止請求(2006年11月)
   軽く済むだろうとタカを括っていたのだが、、、
   、、、、 ワコム社はハンワン社の実用新案を知らなかった
   ハンワン社がワコムの中国特許無効審判請求(戦う姿勢満々)
   ハンワン社の中国実用新案3件を中国ワコム社が侵害していると逆に提訴(2008年1月、河北省石家庄市中級人民法院)(戦う姿勢満々)
   ハンワン社の中国実用新案2件を中国ワコム社が侵害していると更に提訴(2008年1月、黒龍江省ハルビン市中級人民法院)(戦う姿勢満々)
   予想外に3件の訴訟を抱える泥沼化にワコムも愕然!  
   結局、2009年にハンワン社とワコムは、総合的に和解したのだが、和解条件は公表されていない。

モトローラ事件(携帯電話):
北京の朱占新さん(個人)が、モトローラから「回転式ディスプレイ携帯電話」(特許)で500万円勝訴が有名。これは、実用新案ではないが、個人が世界のモトローラに勝ったということで、個人発明に熱が入っており、約7万円で権利が取得できる実用新案が大流行だ。


シュナイダー事件に関して以下引用
北京にある連和連知識産権代理有限公司のシュナイダー事件に関するレポートである
http://www.lianandlien.com/jp/download/wgqyzzgdzscqbhcl.pdfの全文
中国人が書いた日本語(推定)なので、文章がおかしいところはあるが、主張はしっかりしているし、経緯も書かれているので、参考になるはずだ。
=====
シュナイダーエレクトリック侵害訴訟案からみる外国企業の中国における知的財産保護戦略

最近、「中国知的財産権侵害賠償の第一案」と呼ばれる、正泰集団(温州)が中国実用新案権被侵害について、シュナイダーエレクトリック(天津)公司を提訴した案件は、国内外における関連業界、知的財産界及び法律界などに幅広く注目されている。上記の案について、知的財産訴訟案(行政と司法)の動向、特にその中に反映された外国企業が中国における知的財産権保護問題や対策、そして建議について研究し、見解として依頼人の皆様にご報告申し上げるので、ご参考並びご注意ください。

一、案件
1、経緯
原告:正泰グループ控股有限公司(以下、正泰公司と称する)
被告:シュナイダーエエレクトリック低圧(天津)有限公司(SELV)(以下、シュナイダー(天津)と称する)
2、案件の背景
20 世紀90年代、シュナイダーエレクトリックはC60遮断器(ブリーカー)を開発しまして、該遮断器に接点快速閉合機構(FCCM)が初めて配置され、
且つ1991年からヨーロッパで製造した。1993年、シュナイダーエレクトリックは中国にC60系列製品を輸出した。
1996年12月23日、フランスでC60系列改良特許(特許番号FR9616151)を登録し、その中では明らかにFCCM の技術図面も含め、且つ該日付が優先権日として中国に特許出願を提出した。
1997年11月11日、正泰が中国に実用新案出願を提出し、
1999年6月2日に実用新案権を授与された。該実用新案の名称は高分断小型ブレーカーで、実用新案番号がZL97248479.5 である。
2000年、シュナイダーエレクトリックは中国におけるパートナーで天津で成立した合資公司―シュナイダー(天津)にC60製造技術を譲渡した。
2006年7月、正泰公司はシュナイダー(天津)のC65系列製品が正泰公司の持つ実用新案権を侵害したとして、温州市中級人民法院にシュナイダー(天津)を提訴した。
3、争議の焦点
シュナイダー(天津)のC65系列製品が正泰公司の持つ実用新案権を侵害するかどうかのことである。
4、案件の進展
2006年8月、シュナイダー(天津)は国家知識産権局専利覆審委員会へ正泰実用新案無効宣告の請求を提出した。
2007年4月、専利覆審委員会は正泰公司の実用新案が有効性を持つことと審決した。
2007年7月、シュナイダー(天津)は北京市第一中級人民法院へ審決取消し請求訴訟を提起した。
2007年9月、温州市中級人民法院はシュナイダー(天津)のC65系列製品が正泰公司の持つ実用新案を侵害すると一審判決した上、賠償金として3億3000万人民元の支払いを命じると言い渡した。
2007年10月、シュナイダー(天津)公司は浙江省高級人民法院に上訴した。

二、本案には外国企業の中国における知識産権保護問題の啓発
今まで、本案に対する結論がまだ出していないが、筆者は本案の進展を引き続き関心しながら、本案から引き起こした多くの問題について真剣に考えている。外国企業の中国における知的財産保護戦略と策略について、見解としてこの文で述べる。
経済グローバル化時代において、無形資産は、特に企業国際競争には知的財産の重要性がますます目立ってきて、企業が核心競争力の自主知的財産を持つかどうかということは、企業の国際競争における成敗に係る肝心な要素となっている。
中国は現在に世界経済活動においての最も活発な地域の一つとなり、中国と外国企業が避けることできない激しい市場競争に入り込んでいる。但し、中国の知的財産法律体系は、知的財産の法律執行体系を含み、健全になりつつある。このような経済と法制の大背景には、多くの中国企業は創造・革新を重視し始め、知的財産法律保護を重視し、尊重し始める。しかし、このような経済と法制の大背景にも、いろんな知的財産保護の濫用や市場競争秩序を妨害する行為も避けられないように生じてくる。
外国企業では、特に大手企業は、中国における知的財産保護を重視し、適時に中国へ特許・実用新案・意匠出願をし、競争ライバルの特許・実用新案・意匠を監視することが普通になっている。
しかし、中国知識産権局の年報により外国の出願人は実用新案と意匠より、特許のほうがもっと重視し、自社の特許・実用新案・意匠が中国企業に侵害されるかどうかを常に関心をもっているけど、自社の特許・実用新案・意匠は訴えられることになるかどうかは、あまり気づかないという傾向があると分かる。
また、中国の実用新案出願と意匠出願の監視には十分な注意を払っていないため、知らずうちに自社の発展に危険の種を埋めてしまい、トラブルが引き起こした場合大変不利で立場になってしまう。本文に関するシュナイダー(天津)の案は一つの実例である。
今は該案が訴訟の段階で、中国の司法機関は最終に該案に対して公正な判決を出すことを信じている。
一方、シュナイダー(天津)は、そのため、企業発展や企業名誉そして企業財力上の影響と損失は明らかなことと分かる。
このような現状によって、外国企業は中国における知的財産戦略を制定するとき、中国の背景を十分に考え、知的財産にトラブルが生ずる可能性に対して解決方案を制定するほうがいいと思う。
弊社は以下のように提案する。
1、今後の特許・実用新案・意匠侵害訴訟における不利な立場に落ちないように、保護する必要である技術(意匠を含む)に対して、全面的な権利化としたほうがいいである。
中国にその発明又は技術革新を特許・実用新案・意匠出願として適時に提出し、中国の知的財産制度を活用し、完全な知的財産保護体系を作ったほうがいいである。
「小発明」(実用新案)と意匠に対する保護を軽視することてはならない。
そうしさえすれば、災害を未然に防ぐことができ、後の憂いを除くことができる。
2、そして、「知己知彼、百戦不殆」の意味で、中国における全ての特許・実用新案・意匠の監視制度を改善した方がいいである。
一旦、自社の発明創造が他人に特許・実用新案・意匠出願として提出されたことと見つけたら、直ちに無効宣告などにより、自身の利益を保護し、損失を最低にする。
3、万一、上記の二つの手段により可能な危険を阻止できず、企業がまた侵害訴訟される場合には、企業は、有力な証拠を十分に備え、最終の勝訴のため積極的に応訴したほうがいいである。

中国の特許裁判(被告を無理やり大都市に引っ張り出す秘策)

裁判の地方保護主義をかいくぐって、地方の特許侵害者を大都市で提訴するには、大都市でその商品(証拠物品)を買って、販売店と製造者を共同被告として大都市で提訴すればよいと書いたが、市販されていない中間部品だったらどうするか?

買おうにも買うことができない。
それなら、買える仕組みを作ってしまえ!ということになる。

秘策とは、おとり作戦だ。
まず、該当する中間部品を扱う商社を北京にでっち上げる。
架空の会社では、相手が本気にしないし、裁判になったときに共同被告として名前を連ねるのだから、きちんと会社登記をするほうがよい。
手間もお金もかかるが背に腹は代えられない。
億円単位の損害が見えるようなら、ためらわずに実行するしかない。
でっち上げた商社から西安の製造者に注文を出す。市販していない中間部品でも、専門業者からの注文だから販売してくれる。これを証拠に、でっち上げた商社と西安の製造者を共同被告として北京の人民法院に提訴するのだ。
このような、囮作戦による証拠品収集が合法か違法か争われたことがある。
2001年7月の北京市高級人民法院では違法の判断をしたが、2006年8月の最高人民法院では合法の判断をしているので、今のところ合法であるが、グレーゾーンギリギリの攻防であることは間違いない。

ここまでやらないと、中国の知財権闘争では勝てない。
侵害品の証拠収集がとても重要なのだ。

中国の特許裁判(被告を大都市に引っ張り出す技)

西安の会社が特許侵害製品を製造してるとして、これを西安市あるいは陝西省の裁判所に提訴すると、地方保護主義にやり込められて負けてしまう。だから大都市に引っ張り出して裁判をするためにはどうしたらよいか?
裁判所には管轄地域が定められているので、西安の会社を勝手に北京の裁判所に訴えるわけには行かない。


地方の会社を大都市に引っ張り出して裁判を受けさせるには、大都市で証拠物品を買えばよい。
製造場所が何処であれ、販売地の人民法院も管轄権を有する。(製造場所の人民法院も管轄権を有するが、先に訴訟案件を受理した人民法院が管轄権を有する)
証拠物品を北京で購入してから、販売者と製造者を共同被告として提訴すれば、地方の製造者を大都市(北京)に引っ張り出して裁判を受けることが出来る。

このとき、裁判所で領収書をかざしてひらひらさせても、中国では証拠能力を認めてくれないことが多い。領収書の贋物等いくらでもあるからだ。そこで、証拠物品の買い物をするときに公証人を連れて行って目の前で買って支払い、領収書と日付を記した公証人の証明書を同封して封筒を密閉する。これを裁判官に開封させれば証拠として扱ってくれる。ここまでやらないと、中国の裁判では闘えない。

さて、一般に市販されている商品なら販売店を見つけて買えばよいのだが、市販されていない中間部品だったらどうするか?

これには、秘策があるのだが、お楽しみは次回まで。(続く)

中国の特許裁判(地域保護特性)

日本の最高裁に相当する最高人民法院は、全国組織であり重要な判例を示して、各地の高級人民法院や中級人民法院に対して、法解釈の基準を示すことはあるが、指揮権や人事権はないし、人事交流もない。
その地域から出たことがない裁判官が育てば、自然にその地域特有の裁判慣例が育っていく。
さらに、裁判所の人事権を持ち実質的に運営主体である各地の人民代表大会(地方議会)が裁判委員会なる組織を有して、裁判所の監視に当たっているものだから、その地方運営に好ましくない判決は出しにくい。
裁判所の判決に行政的な判断が加わることは、地方に限ったことではない。
2009年7月に新疆ウイグル自治区ウルムチで起きた大暴動の発端となった広東省韶関市の玩具工場での乱闘事件で、韶関市の法院(地裁)は10月10日、1人に死刑、1人に無期懲役の判決を言い渡した。かなり厳しい判決だが、少数民族独立問題を国家存立の重要な問題と考える中国政府の判断がこのみせしめ的な判決を引き出したといえる。直切判決を下したのは、韶関市中級人民法院だが、死刑判決だけは事前に最高人民法院の許可を受けなければならないはずなので、最高人民法院の判断を肩代わりしたともいえる。houin.png

次は福建省の事例だが、電力会社の排ガス脱硫装置が特許に抵触しているとして、特許権者が使用差し止め請求を起こしたが、脱硫装置を外すと地域環境に悪影響を及ぼすため、差し止め請求を却下した判決がある。特許権は認めているので、相応の特許使用料を支払うことを条件にしたのだが、裁判所の判決理由として地域環境保全を優先していることの法的根拠は薄いというか、むしろないと言ったほうがよいだろう。純粋な法的解釈を脇にどけて、行政判断そのものだ。
環境のためなら仕方がないと納得してしまうのか。

じゃあ、特許侵害製品を製造している会社に対して、操業停止を請求した場合はどうだろうか。その工場が多人数の労働者を抱えていた場合、操業停止により失業者があふれると、地域の経済状況が悪化し治安も悪くなるから、特許使用を(暗黙に)認めると言うようなことにもなりかねない。
この考え方は、海賊版DVDや各種模倣品に対する中国政府の基本的な方針なのだから、地方政府が同調するのも当然のことだ。 この辺の私見を「海賊版を止められない訳」に書いておいた。

特許裁判になったときに、いくら中国の裁判所でも、治安が悪くなるからこの特許を認めないと言うわけにはいかない。敵はどういう作戦で来るかというと、特許が無効であるという攻撃をしてくるのである。
特許の無効審判は、進歩性と新規性で争われるのが普通だが、そんな本筋論に入る前に、様式が不完全(記載要件違反、記載不備)だとか、漢字の意味が不明瞭だとか、明確性要件違反(厚い、薄い、強い、弱いなど不明瞭な単語)など、それこそ重箱の隅を突っつくような言い分を裁判官が支持する、最初から結論ありきのお芝居だからどうしようもない。

こういう地域保護傾向は、地方に行くほど強くなり、大都市ではだんだん少なくなりつつある。
日系企業が特許(実用新案や意匠を含む)訴訟を起こすなら、相手の土俵から離れたところで勝負をしなければ、負けるのは確実で、訴訟を起こす意味がない。

たとえば相手の会社が、西安にあったとして、西安の中級人民法院に訴えたとしても勝目はないだろう。
北京か上海で勝負をしなければならないのだが、どうしたらいいだろうか?
裁判所にも管轄地域が定められているので、西安の会社を勝手に北京の裁判所に訴えるわけには行かない。

さて、その答えは次回。(続く)
前のページ 次のページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。